「多様なニーズに対応していく上で、ニコイチの成功は非常に大事な一歩」
建築家 星田 逸郎氏インタビュー
※間取図は、計画段階のものであり多少変更になる場合があります。
昨年度実施したニコイチは大変ご好評の声をいただきました。その人気を受け、今年度は、最も人気だったプランをバージョンアップして実施することに。設計者の星田逸郎氏に話を伺いました。
昨年、ニコイチを実施した感想を聞かせてください。
私自身も2戸を1戸にするという設計は初めてだったので、空間の広さや住まい方など、どういうことが可能か分からない状態からスタートしました。
手探りですが、非常に楽しみでもありましたね。
子育て世帯の様々なくらし方を空想しながらニコイチ空間の使い方を考えていきました。
その中でも「子育て快適空間プラン」が最も人気だったことについては、住む方が、自由な空間で自分らしくくらしたい気持ちがあったのかなと思います。
個室の数が2つだけで共用の領域が広いことで、いろいろなくらし方ができるということをみなさんが想像したのではないでしょうか。
昨年のプランとの違いを教えてください。
基本は昨年のプランを踏襲しているんですけれども、今年は玄関が2つあるということで、非常に出入りが自由で、玄関前を行き来することができます。
非常に柔軟な動線のつながりがあるということで、プランは似てても昨年とはまったく違ったくらし方ができると思います。
自由度がより高くなり、様々な好みやライフスタイルの方に使っていただけるのではないでしょうか。
また昨年とは異なり最上階の5階でのプランですので、玄関を出たところから外に向かっての景色が非常に豊かなものとなっています。
戸建住宅では得られない素晴らしい景色ですし、登りきった階段室自体が自分たちだけのスペースと感じるので、より落ち着いたくらしが可能ではないかと思います。
どのような方に住んでいただきたいですか?
本当にいろいろな方に住んでいただきたいですね。
プランニングの段階では、ある程度ライフスタイルの設定はしますが、まったく想定しなかった方々も住んでいただけると思いますし、僕が想像できなかったくらし方を発見したいんです。
元々こういったリノベーションは、設計者が空間の使い方を全て決めきるのではなく、「あなたならどういう使い方をしますか?」というような残し方をする方が、より豊かになると思うんです。
団地で行う2戸1化リノベーションの今後の可能性について聞かせてください。
元々団地というのは、同じ部屋を大量供給することが目的だったと思うんです。 そこに子育て世帯のこれからの日本の高度成長を担う若い世代の方々が一挙に住まい、様々な助け合いの中で生活が行われてきたんですよね。 しかし今は、一つのまちのように様々な世代の人が助け合ってくらしていかなければ立ち行かない時代がきていると思いますので、多様なニーズに対応していく上でも住戸の面積やタイプなど色々なものを団地の中で展開していく必要があると思います。 そういう意味では、ニコイチが少しずつ成功しながら実績として成立しているということは、非常に大事な一歩だと思います。
建築家 星田 逸郎氏 プロフィール
㈱星田逸郎空間都市研究所代表/建築家・都市プランナー
2001年星田逸郎空間都市研究所設立。
都市計画や地域デザインなど多彩な活動と視点を通して、集合住宅や住宅など建築の設計に携わっています。
HP:http://itsurouhoshida.d.dooo.jp/