新しく創造した住宅や街にない魅力をもつ団地の再生力
建築家 星田 逸郎氏インタビュー(2015年)
年数の経った建物や街には、新しい住宅や街にはない魅力があるんですよ」
株式会社星田逸郎空間都市研究所・代表の星田逸郎氏は、
「新築のマンションや戸建ての建築設計、都市計画、街全体の設計をするなかで、長い年月が経った団地の再生・改修の仕事をするようになって約10年になります。戸建住宅や集合住宅などの新築にも勿論携わりますが、 年数の経った建物や街には、新しい住宅や街にはない魅力があるんですよ」
と、優しい口調ながらも力強く話してくれました。
今回、株式会社星田逸郎空間都市研究所と株式会社森工務店が共同で設計・提案した作品は、「大阪府住宅供給公社茶山台団地住戸改善事業 設計・施工業務」の公募型プロポーザル提案協議において、A事業(2戸1住宅リノベーション)の最優秀提案者として選定されました。
プロポーザルで発表された秀作の中から見事受賞を手にしたこのリノベーションプランは現在、茶山台団地の当該住宅の工事に着手しており、2016年2月末の完成予定となっています。
団地再生や古い建物の改修を多く手掛けてきた星田氏に、今回の設計プランでのこだわりと建築家としての想いを語っていただきました。
家族のライフスタイルに合わせてくらし方をデザインする
今回のプロポーザルのテーマは、『広い間取りを活用した子育て世帯向けの魅力的な住宅プラン』だったこともあり、設計にあたり着目した点が2つあります。
1つは一人の人間として家族のくらしをイメージすること、2つ目は専門家として居住空間を創造することです。人間形成において0〜5才ぐらいの子どもは、お母さんの精神状態が一番大切です。
お母さんが落ち着いて活き活きとくらせれば、子どもも健やかにのびのびと成長していくでしょう。
また、ライフスタイルについても、その家族のくらし方がデザインになるような住宅を提案したいと思ったのです。
子育て世代の多様性に応える3つのプラン設計
一般的に、古い団地は取り壊すしかない劣悪なもの、というイメージがあるかもしれませんが建築家の目から見ると、古さの中に近年の新しい住宅にはない、新鮮な魅力を見出すことがあるんです。
例えば、今回の茶山台団地の2戸1住宅リノベーションの当該住戸においては、プライベートとコモンスペースが使い分けできる専有面積約90m2のゆったりスペース、大型収納の倉庫と2つのトイレ、南向き間口が約14m、北と南に窓があり、通風や採光に恵まれた贅沢な住空間になっています。
団地内はゆったりと形成され、緑も多く野鳥の声が聞こえてくる自然豊かな環境です。
新築の分譲マンションでもこれだけの間取りや住環境は、そうそう見ることはありませんし、あったとしてもかなりの高額になるでしょう。
設計した間取りプランは、「空間のゆとりを最大限活かす、快適子育て住宅」、「近隣や近居の親と協力しくらし合う、仲良し子育て住宅」、「老・若・子3世代でくらす、わいわい子育て住宅」の3タイプです。
内装は、古いものと新しいものが融合したデザインになっています。
内装にどんな工夫をしたのかは、現地での内観のお楽しみにするとして一言で、子育てファミリーと言ってもやはり、世帯によって生活スタイルは様々で、決まったパターンはありません。
だから、1つの間取りで3つの住戸を施工するのではなく、3住戸ともに別々のプランを考えました。
とはいえ、私たちが考えたコンセプト通りのくらしでは味気なくなるため、住む方が自分たちで作り上げられる余地を残したプランになっています。
そういう意味では、子育て中のファミリーに限らず、子育てが終わった方々にも楽しく快適に住んでもらえるのではないかと考えています。
自分の人生を豊かに楽しみたい方々に、ぜひ住んでもらいたい間取りプランと住環境です。
建築家 星田 逸郎氏 プロフィール
ホシダ イツロウ
㈱星田逸郎空間都市研究所代表/建築家・都市プランナー
2001年星田逸郎空間都市研究所設立。
都市計画や地域デザインなど多彩な活動と視点を通して、集合住宅や住宅など建築の設計に携わっています。
HP:http://www.jttk.zaq.ne.jp/baeko605/